春の企画展 「絵本のような絵画展〜穐月 明の絵から始るおはなし〜」は終了しました。

【会 期】2025/4/19日㈯〜5/26㈪

穐月作品の多くには元になった話が有ります。古典や禅のむつかしく思える話でも、読んでみると面白い物を題材にしています。今回の展覧会ではそんな絵の元になった話を童話のように楽しく読めるお話にしました。細かいニュアンスや表現は正確ではないかもしれませんが、こんなおかしなお話なんだなと、絵を観ながらお楽しみいただけたら幸いです。おとぎ話有り、伝記有り、説話有りの絵本のような展覧会です。

【お話】
  • 童 話(よくしられた昔話や創作のおはなし) 「一寸法師」「浦島の伝説」「機織り虫」「モグラの死」
  • お釈迦様の物語(仏教を始めたインドの修行者・釈迦の伝説)1〜9
  • 弘法大師のお話(平安時代に大活躍した真言宗の開祖弘法大師の伝説)1〜6
  • 逸話・説話(名僧のユーモラスなエピソードと中国の不思議なお話)「パンタカさんの掃除」「めろうふ観音」「九官鳥の念仏」「りんざい和尚・松を植える」「不老長寿の村」

展示解説の文章は穐月 明作品に引用された画讃及び経典や古典、ネット上の情報なども参考にしながらお伽話や説話、伝説を当館学芸員が独自の解釈で要約したものです。
元の物語の大筋からは大きく逸脱しないよう留意しましたが、読みやすさ、分かりやすさを第一に当館学芸員が創作した「お話」であることをお断りさせて頂きます。
  令和七年四月十九日 伊賀市 ミュージアム青山讚頌舎 学芸員 穐月大介

「千方将軍伝説ハイキング~猫岩を探しに行く」

藤原千方将軍の伝説は阿保地域から家城にかけて広く残っていますが、今回は千方将軍の化け猫退治の伝説が残る猫岩を探しに行きます。

【コース】上高尾 ハナレ~鈴又~鈴又ダム(尾根道)~猫岩~谷道~鈴又~上高尾 ハナレ

(徒歩約6km)

【開催日】5月18日(日)

【集 合】10:30 上高尾 週末レストラン「ハナレ」伊賀市高尾4503(駐車場有り)

【参加費】300円(観覧券付き) 定 員:先着15名

【持ち物】お弁当、飲み物、雨具、防寒着等

【申 込】青山ホール☏0595-52-1109で受付

GW工作教室/飛ぶ玩具を作る

オリジナルのタケトンボやペーパーグライダーを作り、飛ぶように調整し、飛ばすところまで一緒に遊びます。ハサミとセロテーで作れます。

【開催日】5月3日(㈯)「ペーパーグライダーを作って飛ばそう」

【開催日】5月4日(日)「タケトンボを作って飛ばそう」

【時 間】13:00~15:00

ギャラリートーク「おはなし絵画展」

作品を見ながら元になった面白い物語をお話しします。

【開催日】4月26日(土)13:30~

塗り絵コーナー

期間中は無料でご利用いただけます(自由にセリフも入れる)。

当館は新緑の美しい季節です

童話 よく知られた昔話や創作のおはなし

童話

穐月明「お伽草子シリーズ」一寸法師⑴                  一寸法師⑵

一寸法師


むかしむかし、子供のいないおじいさんとおばあさんがおりました。何とか子供が出来ないものかと神様に一生懸命お願いすると親指ほどの小さな男の子が生まれました。二人は大喜びし一寸法師と名づけましたが、いつまでたっても少しも大きくなりませんでした。
ある日、おじいさんとおばあさんが心配しているのを知った一寸法師は独り立ちしたいと都行きをおねがいしました。おじいさんとおばあさんはお椀を船に、お箸を竿に、針を刀の代わりに持たせ、川に浮かべて送り出してやりました。
冒険をかさねて都にたどり着いた一寸法師は大きな屋敷を見つけ働かせてもらうことになりました。


ある時、そこのお嬢さんのお供でお宮参りに出かけた時、そのころ都を荒らしていた鬼がお嬢さんをさらいに来ました。一寸法師は勇敢に立ち向かいましたが、ついに捕まりひと飲みにされてしまいました。それでも鬼のお腹の中を針で突きまくって大暴れすると、あまりの痛さに一寸法師を吐き出して鬼は逃げていきました。その時、鬼は魔法の小さな木槌を落としていきました。
一寸法師はお嬢さんにたのんで木槌を振って大きくしてもらうと、立派な若者になりました。その後、そのお嬢さんと結婚して裕福に暮らしたそうです。

博多人形「いたずらっこ」/西頭哲三郎刻印
穐月明「野の仏」・機織り虫

機織り虫

キリギリスは鳴き声がギー・チョン、ギー・チョンと機を織る音に似ているので「機織り虫」とよばれます。
石のお地蔵さんのそばでキリギリスはギー・チョン、ギー・チョンとお地蔵さんのために暖かい服を織っているのです。

山のすすきのやぶかげに
はたおり虫は機をおる
月の青さにぬれながら
織るのはぼさつの召衣
石の姿におわすれど
月の光の青ければ
地蔵菩薩は寒かろと
機織り虫は機を織る

作者は「泣いた赤鬼」などで知られる童話作家の浜田 広介です。

逸話・説話 名僧のユーモラスなエピソードと中国の不思議なお話

逸話・説話
穐月明「馬郎婦観音菩薩」・馬さんの花嫁

馬さんの花嫁

中国の唐と言う昔の時代、新しい思想の仏教に若者はまだ無関心でした。
ある日、地方の町にとても美しい女性が現れ、若者たちは争うようにプロポーズしました。
すると女性は「観音経を空で言えたら結婚してあげる」と難題を出しました。皆必死に勉強し20人ほどの若者がクリア。その後も次々難問を出し最後に馬さんと言う若者だけが見事に全問クリアしました。
約束通り女性は結婚式に現れましたが、披露宴の時、「少し休む」と言って寝室に行ったきり亡くなってしまいました。
数日後、馬さんの所に年老いたお坊さんがやって来て女性の墓に案内させました。お坊さんが杖で叩くとお棺が開き、中に金の骨だけが残っていました。
観音様が美しい女性になって若者たちをやる気にさせたのです。

お釈迦様の物語 仏教を始めたインドの修行者・釈迦の伝説

お釈迦様の物語
穐月明 仏伝図張雑屏風「出胎」・お釈迦様の物語 ⑴ 誕生

お釈迦様の物語

⑴ 誕生
釈迦はキリストより500年ほど前にインドで生まれ、仏教を始めた人です。
どんな生涯を送ったかは、ほとんど分かっていませんが色々な伝説が残されています。
お釈迦様の物語の始まりです。
   ・  ・  ・
インドの小国のマヤ王妃と言う方が右脇から白い象が入る夢を見ました。その話を聞いた司祭達は「ご懐妊です。この子はこの宮殿で世界の王となられるか、家を出て人々を救う聖者(ブッダ)となられるでしょう」と予言しました。
出産まじか、王妃が美しい花園を散歩していた時、急に産気づきました。
右脇から金色に輝きながら生まれた子は、すぐに七歩歩いて、「われはこの世で真理を得る者なり」と宣言しました。
シャカの誕生です。

穐月明 仏伝屏風「四門出遊」・ お釈迦様の物語 ⑵ 外出     穐月明 仏伝屏風「剃髪」・お釈迦様の物語 ⑶ 出家

⑵ 外出
父王はシャカを宮殿に留めてここで王になってもらいたいと、美しいものや楽しいことだけを与えて育てました。やがて武術も学問も誰より優れた立派な青年となり、妻もめとり子供も出来ました。
しかし、ある日シャカが別荘にお供を連れて遊びに出かけた時、老人と出会いました。「あれはどういう人間か?」とお供に聞くと「老人です。人は必ず年老います」と答えました。それを聞き宮殿に引き返し考え込んでしまいました。
別の日には病人、又、別の日には死人に出会い、誰も避けられない苦しみに思い至りました。
ある日、修行者に出会ったシャカは又聞きました。従者は「あれは家を出て真理を求めようとしている修行者です」と答えました。シャカは喜びこの日は別荘に出かけました。

⑶ 出家
ある夜、シャカはついに宮殿を出る決意をします。
夜中、従者に馬を用意させ誰にも気付かれぬようそっと門を出ようとすると、神々も偉大な聖者(ブッダ)となられる方の手助けをしようと馬のヒヅメの音を消し召使い達を眠らせました。
シャカはある川のほとりまで来た時、馬を降り、従者と馬を宮殿に返しました。そして長く伸ばしていた髪を切り、豪華なアクセサリーや衣服をたまたま出会った猟師の服と交換し、全てを棄てて質素な修行者になりました。
そして、当時有名だった何人もの仙人の所に入門し修行しましたが、どれも自分の求める真理は得られないとガッカリしました。

穐月明仏伝屏風「苦行」・お釈迦様の物語 ⑷ 苦行     穐月明仏伝屏風「正覚」・お釈迦様の物語 ⑸ 座禅

⑷ 苦行
そんな時、5人の修行者と出会い当時のインドで重要な修行方法とされていた苦行をすることにしました。
森の中で6年間ほとんど飲み物も食べ物も口にせず、ただひたすら耐え、身体はやせ細り、美しかった身体は見る影もなくなり、死の直前までいって倒れてしまいました。奇跡的に目を覚ました時、こんな方法ではなんの真理も得られないことに気がつきました。
そこで森から出て木の下に座っているとスジャータと言う美しい女性が牛乳で作ったお粥をもってきて食べさせてくれました。
元気を取り戻したシャカは今度こそ真理を手に入れようと歩き出しました。

⑸ 座禅
シャカは考えます。「私が求めるのは皆があらゆる苦しみから逃れられる真理だ。そのためには今までの方法ではそれは得られない」そこで座禅をして世界を見つめ直すことにしました。
草を刈っている人からもらった草の束を大きな菩提樹の下に敷き、そこに座って心を静かに集中しました。
「世界の物も事も全てつながり常に変化している。変わらない物も価値も無い。にもかかわらず人は物や事にこだわり、富や名誉を欲しがり、そのことで恐れ、憎む。そんな幻のようなものへのこだわりを棄てあるがままを受けいれ、心の中から欲や怒りや憎みを取り除けば、心が安らかになり、本来の美しい世界が見えてくるではないか」

穐月明 仏伝屏風「降魔」・お釈迦様の物語 ⑹ 真理     穐月明 仏伝屏風「転法輪」・お釈迦様の物語 ⑺ 説法

⑹ 真理
苦しみの原因に気付いたシャカは自分の心の中のこだわりや執着心、思い込みを取り除き、怒りや憎しみ、欲を一つずつ消していきました。
この時、シャカが人々を救う聖者(ブッダ)となってしまうと気付いた魔王は魔物の軍隊を差し向け脅しますがシャカは動じません。ならばと稲妻や嵐、美しい女性、幼い子供まで送り込みますが全て退け心を乱しませんでした。
ついに心のこだわりを全て棄て真のやすらぎを得て真理に到達したシャカは聖者(ブッダ)となりました。

⑺ 説法
真のやすらぎを得たシャカは静かにそれを楽しんでいましたが、7日目に「この真理は難し過ぎる。人に分かってもらえないだろう」と考えました。
それに気付いた天界で一番偉い神は急いでやって来て、この誰もが救われるすばらしい真理をどうか皆に教えて欲しいとたのみ、シャカは心を変えました。
シャカはまず共に苦行をした5人の修行者の所に行きましたが、5人は苦行をやめたシャカを軽蔑していました。
しかし、近づいてくるシャカのただならぬオーラにおされ迎え入れ説法を聞きました。そしてその真理に感動し弟子になりました。
それ以来シャカは45年間インドを旅して修行を続けながら人々を救う真理を伝え続けました。

穐月明「森の御堂」・お釈迦様の物語 ⑻ 修業           穐月明「涅槃」・お釈迦様の物語 ⑼ 安らぎ

⑻ 修業
シャカは普段、森の中で多くの弟子の修行者達に説法や助言をしながら共に座禅をし、村に出て食べ物を寄付してもらったりしながら修行を続けていました。そんな頃のシャカの心境がお経に残されています。

本当に森での修行生活は楽しい。
町や村で便利に暮らす人たちはそう思わないようだが、
よけいな欲の無い修行者はここで楽しく暮らしている。
彼らは色々なことにこだわりや執着心を持たないようにしているからだ。

⑼ 安らぎ
80歳になったシャカは二本並んだ沙羅の木の間に横たわり最後の時を迎えようとしていました。
旅の途中、熱心な信者にご馳走になったキノコ料理に当たったようです。
しかし、そのことを責めも、恨みもせず、弟子達をよんで最後の説法をしました。

私は君たちに全てを伝え、この世界で出来ることはすべてやり終えた。私がいなくとも私の伝えた事が君たちを導くだろう。全ての事は移り変わっていくのだ。怠けずに修行を完成させなさい。
私は今、苦しみの無い永遠の安らぎに入るのだよ。
と言って亡くなりました。

今もお坊さん(修行者)達はシャカの教えを守り修行をしています。