穐月明「青山流水」

穐月明「青山流水」

この作品は70代終わりに「流水讃歌」のシリーズとして描かれた作品です。「流水讃歌」は平成20年の個展で発表され、作家自身が関わった個展としては最後の個展になりました。
穐月明の世界観には仏教が深く関わっており仏教の世界観では世界はそのままで美しいという見方があります。ですから美しい自然を描くことはそのまま仏の世界を描くことでも有ったのでしょう。しかし野や山や河だけではなく人が関わる自然を描きたかったようです。其れは「流水讃歌」の挨拶文にも著されています。この絵では川辺に一人小さな人物が歩いています。其れに気づくとこの景色が人の住まう景色であることが鮮明になります。

青山流水(人物)

青山流水(人物)

しかしこの絵の見所はやはり空気感でしょう。日が昇る直前なのでしょうか、山間の村の涼しい空気が感じられ河の音も聞こえてきそうです。

穐月明「残雪の川」

穐月明「残雪の川」

穐月明「澗聲(かんせい)」

穐月明「澗聲(かんせい)」

穐月明は水や空気の表現を得意としています。「残雪の川」では雪解けの増水した川の流れと朝の冷たい空気、「澗聲(かんせい)」では正に谷川の音(澗聲)が聞こえてきそうです。「鉢中の天」の水の質感は前回紹介しました。
もう一つこの時期の特徴はあえて構図をくずしたりデフォルメしていることでしょう。描こうと思えば写真の様にかけてしまったようですが敢えて下手(げて)さを出しているように見えます。本人もあるとき「下手が大事なんだ」とぽつりと言ったことがあります。

穐月明「湾内の漁業」

穐月明「湾内の漁業」この作品は統一された遠近法で描かれ美しい写真のようです。

この「湾内の漁業」も素晴らしい作品ですが、「流水讃歌」のシリーズで目指したのはもう少し情感のある世界だったようです。