愛媛県美術館に今年寄贈致しました穐月明の絵が展示されています。6月2日までの展示でギリギリだったのですが見に行ってきました。
愛媛県美術館は松山城三之丸(城山公園)にあり二之丸も本丸天守閣も望める城好き必見の場所にあります(因みにこちら側が本来の大手筋です)。

愛媛県美術館

穐月明作品は平成30年度新収蔵品展の壁一面全面を使い8点全て展示されていました。綺麗に展示されていて大変嬉しかったです。以下紹介いたします。


「寒松 牡丹図」

穐月明「寒松 牡丹図」/愛媛県美術館蔵

この作品は墨一色でありながら洋画的な奥行きのある表現で花や雪の美しさを質感、空気感そのままに描いています。しかしそのまま描くと言っても描き込み過ぎれば重くなり余計な物まで見えてきます。そこには巧みな減筆と省略がなされ美しい寒牡丹となっています。穐月明の得意とする表現です。


「鉢中の天」

穐月明「鉢中の天」/愛媛県美術館蔵

「鉢中の天」のシリーズも代表作です。墨のボカシとカスレで表現される水の質感は絶妙です。しかも墨絵らしい清涼感は失われていません。鉢の中にも世界があります。


「野の仏」

穐月明「野の仏」/愛媛県美術館蔵

穐月明と言えば「野の仏」シリーズが最もよく知られています。これは最も晩年のもので輪郭がハッキリ描かれるようになり雰囲気は童話的になります。この賛と良くあっています。


「行水猫」

穐月明「行水猫」/愛媛県美術館蔵

穐月明は写実的に表現する本画に対し簡略な表現の絵を素描と呼んでいました。素描にはユーモラスな物が多く、此れも懐かしく楽しい金盥の行水です。この絵には姉妹とも言える「行水犬」という作品が有り今、当館企画展「可愛い絵 楽しい絵」で展示しています。


「仔犬」

穐月明「仔犬」/愛媛県美術館蔵

意外知られていないかもしれませんが穐月明作品には動物が良く出てきます。動物が大好きだったので沢山の動物を飼っていたこともあり、晩年は猫と何時も一緒でした。さすがに動物のキャラクターを良くつかんでおり犬はちょっとバカっぽく描きます。この「仔犬」も当館企画展「可愛い絵 楽しい絵」に同時期の仔犬の作品を展示しています。


「山川四景屏風」

穐月明「山川四景屏風」/愛媛県美術館蔵

晩年穐月明は「流水頌歌(ながれのうた)」シリーズに取り組みます。自然の中を流れる川と其処の暮らしを描いた風景画ですが、何気ない風景に限りない美しさを見出していたようです。この屏風の左から月光の宇治橋と五十鈴川、木津川上流から見た伊賀上野城、伊賀の秋の村落、大台宮川辺りでしょうか。月光、水面の輝き、ススキの穂の輝きと山々の空気感、画家の中の理想郷のようです。


「月影渓流」

穐月明「月影渓流」/愛媛県美術館蔵

これも「流水頌歌(ながれのうた)」シリーズですがこちらは幻想的な月夜の林です。かなりデフォルメされていますが伊賀の山中には此の雰囲気の場所が有ります。月光は人の視覚もデフォルメしますのでその意味では見たままかもしれません。


「月光」

穐月明「月光」/愛媛県美術館蔵

自宅自体も林に囲まれているのですがその林の月です。ごくみじかな物をよく題材にしていましたが、これは自慢の月だったと思います。


松山へ行ったので次回展示「絵で観る俳句」のために正岡子規関係の博物館も見て回りました。其れで気付いたのですが・・・。
俳句の多くは見たままの情景を句にする「写生」の手法がよく使われます。写生の俳句は美しい、楽しい、面白い部分を抽出して表現します。穐月明作品にも共通するように思いました。
その意味でも俳句の街の美術館が所蔵して下さったことは相応しいかもしれません。