展示紹介「鉢中の白椿」穐月明
穐月明は70歳くらいまで一部に朱や金は入るもののほぼ墨だけの表現を追求してきました。この作品は50歳ごろ、墨の表現が完成した頃の作品です。
鉢にはコバルトの顔料がかかり、水が張られています。そこに投げ入れられた椿の葉の表裏の色合いと質感の違い、花の雄しべの黄色まで見えてきます。白く浮き立った椿の花は白色を差したのではなく白い紙の色を残したのです。これを全て墨の濃淡だけで表現しています。
椿の美しさを描くために、墨だけで美しい椿を余すとこなく描くことが出来るのです。
穐月明は京都美大で油絵と日本画の基礎を学んだ後、独学で水墨画を始めます。師に付かず、派閥に属さず文人の書画を好んで研究していたようですが、自身は伝統的な線による表現は追求せず独自のボカシとカスレを駆使し面で構成しながら紙色を残す手法を確立していきます。
そして水の量感も生き物の生命力も朝霧の冷たさも墨だけで表現できるようになります。
この後作家は色を加えるようになり張り詰めた静謐な作品から、少し下手(げて)で情感のある作風を目指したようです。
→展示紹介「青山流水」へ
*仏画などは初期から彩色していました。
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