展示紹介/穐月明「掬水月在手」「弄花香満衣」
GW中は沢山の方に来て頂きありがとうざいました。初瀬街道沿いと言うこともあるのか伊勢参りの帰りに大村神社と当館に寄ってくださった方も多かったようです。
今回の展示は可愛い絵や面白い絵を集めましたが、その中でも美しい絵を紹介します。
月光に照らされた蹲(つくばい)と満開の梅の花の美しい二幅対の作品ですが書かれている言葉も大変美しい漢詩の一節です。空の月は取れなくとも水を掬えば手にできるのです。。
出展は唐代の詩人于良史の『春山夜月』と言う五言律詩です。
春山多勝事、賞翫夜忘帰
掬水月在手、弄花香満衣
興来無遠近、欲去惜芳菲
南望鳴鐘処、楼台深翠微
【訳文】
春の山はすばらしい事が多く、観ていると夜帰るのを忘れる
水を掬(すく)えば月手に在り、花を弄(もてあそ)べば香り衣に満つ
興来らば遠くとも趣き、芳しい花の香りを追いたいものだ
南に鐘の音のする所を望めると、楼台は新緑に隠れている
今の季節ですね。
とてもかわいらしい絵ですが此れも出展は唐代の五言律詩です。作者は周賀、『春喜友人至山舎』(春、山荘に友人が来るを喜ぶ)と題されています。
鳥鳴春日晩 喜見竹門開
路自高岩出 人騎痩馬來
折花林影動 移石澗聲回
更欲留深語 重城暮色催
【訳文】
鳥のさえずりの中に春の日も暮れようとするころ、竹の門の開くのを見て胸を躍らせる。
そそり立つ岩の間から抜け出る道を、人が痩せ馬に乗ってやってくる。
花を手折れば木立の影は揺らぎ、石を移せば谷のせせらぎも廻る。
もっと此所で深く話をしたいが、もう街に夕暮れの色が迫っている。
絵は梅の枝を折って影が揺らいでいます。