展示紹介/穐月明「時雨図」・広瀬惟然の俳句
しぐれけり
走り入りけり
晴れにけり
広瀬惟然句
「しぐれ」は冬の初め急に降ったと思うと直ぐに止む雨のことです。
この句は「雨が降ってきたのであわててどっかの軒に逃げ込んだらもう雨は止んでいた」というユーモラスな情景をけり・けり・けりと三つ続けて軽く調子よく詠んでいます。三段切れなど気にしていません。
絵の方も適度に省略れて何とも軽妙で力の抜けた感じが笑えます。穐月明のユーモアのセンスと句の波長が合ったのだと思います。
この広瀬惟然と言う人は蕉門十哲に入れられることもある芭蕉の高弟で、風狂な生き方を貫いて極貧に甘んじた人ですから真剣に俳句に取り組んだ人です。
しかしその作風は飄々としてとぼけたユーモアがあります。
惟然は芭蕉晩年の弟子で芭蕉の「軽み」に共感したようです。「軽み」は一応ごてごて捻らず素直に詠むということですが、今の「軽い」とほぼ同じと取って良いように思います。
梅の花
あかいはあかいは
あかいはな
惟然のこの句は当時同門の弟子から、句になっていない「軽み」を曲解していると批判もあったようです。しかし私は芭蕉の目指した俳諧は「わびさび」や「風雅」な風格を備えつつ上質なユーモアを目指したように思います。この句を紅梅が花びらも芯も茎を切っても中まで赤いのをユーモラスに詠んだ素直な句と取りたいと思います。
惟然は口語調俳句の先駆けとして後の一茶などにも影響を与えました。
単純にに面白いのでそういった惟然の俳句を紹介します。