展示案内/穐月明の「西国三十三所」に登場する3人は誰なのか?

穐月 明の「西国三十三所」には各札所の寺院を案内する男性と女性と女の子の3人が描かれています。

明はあまり人物を画題とせず、絵に登場させても小さく簡素に描きました。しかし小さくともその人物がどんな気持ちで何をしているのか想像できてしまします。顔は描かれていなくともデッサンがしっかりしており手足や体の表情だけで情感が想像できるのです。

実は学生時代肖像画のアルバイトをしており人物もしっかり描けるのですが、あまりちゃんと人物を描くことは好まなかったようです。
しかしこの「西国三十三所」では「巡礼」をテーマとしているためか、かなり丁寧にこの3人の人物を描いています。
ではこの3人は誰なのでしょう?作者は何も言い残していませんので私なりに推理してみたいと思います。


穐月 明 西国三十三所「第十番三室戸寺」/3人は伝統的な巡礼の衣装を着ていますが時代は現代です。


穐月 明 西国三十三所「第十二番正法寺(岩間寺)」/男性と女性はわりと高齢のようで60歳代でしょうか。女の子は6〜7歳のようで、おしゃまな感じです。お爺さん、お婆さんとお孫さんでしょうか。


穐月 明 西国三十三所「第二十一番穴太寺」/女の子がお爺さんお婆さんを呼んでいるようです。


穐月 明 西国三十三所「第二十二番総持寺」/第二十一番穴太寺も第二十二番総持寺も女の子は元気いっぱいで先に行って二人を急かしているようです。お爺さんお婆さんは少ししんどそう。


穐月 明 西国三十三所「第二十三番勝尾寺」/女の子は紅葉の落葉を捕まえようとしているようです。


穐月 明 西国三十三所「第二十七番円教寺」/3人とも巨木を見上げています。第二十三番勝尾寺でも第二十七番円教寺でも樹木・自然に対する敬意を感じます。


穐月 明 西国三十三所「第二十二番総持寺」/女の子は犬と遊んでいます。お爺さんお婆さんはそれを温かく見ているようです。自然に対する敬意や動物好きは作者自身のキャラクターを色濃く反映しているようです。


穐月 明 西国三十三所「番外法起院」/番外法起院で3人が結構大きく正面から描かれています。男性は背が高く細面で少し厳しい印象です。60代の穐月明に似ています。

西国三十三所は2回描かれており昭和61年くらいから取材されていますが当館所有の西国三十三所の資料写真と考えられるものは1993年に撮られています。これは作者が64歳の時で、絵の完成もこの頃でしょう。描かれた男性の風体と一致します。

女性の方は少しうつむき加減で妻の由紀子でしょうか。由紀子は神経質な所のある明に付き添って旅行することを、楽しみでもあり、ちょっと面倒だとも思っていたでしょう。それを感じていた明は少し後ろからうつむいて付いて来ているように描いているのだと思います。
では、おしゃまな女の子は誰でしょうか?
昭和62年に孫娘が生まれており絵はその6~7年後(1994)くらいに完成したと推定されます。絵の中の少女の歳も6~7歳くらいに見えます。
明は可愛いものが好きで増して自分の孫娘ですから、いつか三十三所を一緒に回りたいと想像したのではないでしょうか。

