『紫式部日記』〜この辺に若紫いない?〜中宮彰子の出産と宴会
9月22日㈰の「光る君へ」はいよいよ中宮彰子が敦成親王を出産するようです。其の記録は紫式部が詳しく『紫式部日記』に書かれています。
当館で現在開催中の「のぞいてみよう源氏物語の世界」展では大河ドラマ「光る君へ」の元ネタがたくさん出てきます。
此れも其の一つで『紫式部日記絵巻』敦成親王の誕生五十日の儀式の後の宴席で藤原公任が酔って紫式部に「この辺に若紫いない?」と問いかけるシーンです。紫式部も『源氏物語』の作者として公卿に冗談を言われるくらい知られるようになっていたのです。しかし式部はグダグダな公任を「源氏の様な良い男も居ないのに」と無視します。
平安時代に描かれた『餓鬼草紙』には当時の貴族の出産も載っています。『紫式部日記』にも中宮彰子の出産の様子が書かれておりこの絵と一致します(規模はもっと大きいですが)。
中央の女性が座産で出産した所で、子供も描かれています。内装も携わる人の装束も白で、室内の割れた土器は胞衣(後産)のためのまじない、産所の右隣の部屋には安産ともののけ退散のため、僧と巫女の祈祷が行われ、左隣から顔をのぞかせる人物は悪霊退散のために弓の弦を弾いています。他に外では魔除けの米を撒いていたはずです。
ただし、赤子に手を伸ばしている化け物が餓鬼で周囲からは見えていません。