秋の通常展「浜辺の四季〜穐月明が描く海〜」は終了しました

2024/10/31 ㊍~ 12/20 ㊎

穐月明が少年時代を過ごした故郷 実報寺は愛媛県西条市の海に近いお寺で、浜には大きなカブトガニが生息している自然と文化の豊かな所でした。それゆえか海の作品にはなにかしらの故郷への思いが反映されているようです。

夏の穏やかな海、冬の荒海、月夜の海、海にまつわる和歌や物語を描いた作品など海を描いた作品には、得意とした清らかな理想郷のような山河作品とは違う力強さや荒々しさを感じさせる作品が多いようです。

大きな海原とそこに広がる波と光り、そしてそこにも有る人の暮らしをご覧ください。

■ 呈茶会「紅葉の茶室でお茶をいただく」
・当館付属の茶室はイロハカエデが美しく紅葉します。秋の庭を愛でながら抹茶をお楽しみください。
【日 時】  11月17日(日)・23日(土)・24日(日)
      10:00~、11:00~、13:00~、14:00~(1日各4回)
【呈茶代】 400円(抹茶・お菓子)
【定 員】 各回12名  ◎要予約
【お申込】 10月12日(土)10:00より青山ホール☏0595-52-1109で受付

■ 近郊ハイキング「水辺の景色をたどる」
・ミュージアム見学後、羽根から川上ダムの下まで前深瀬川沿いの文化財や自然の恵みを探して歩きます。川上ダムでは内部を見学させてもらいながらダムの上まで登ります。
【コース】伊賀市ミュージアム青山讚頌(展覧会見学)~青山羽根~頓宮~川上ダム(内部見学)~伊賀市 ミュージアム青山讚頌舎(徒歩約6km)
【開催日】12月1日(日)13:00、 伊賀市 ミュージアム青山讚頌舎受付集合
【参加費】300円(観覧券付き) 定 員:先着15名
【持ち物】飲み物、雨具等
【申 込】10月19日(土)10:00より青山ホール☏0595-52-1109で受付
     ※申込受付は、11月21日(木)17:00までとなります。
【案 内】当館学芸員 穐月大介

■ ギャラリートーク「穐月明の故郷と海」
・穐月明が育った故郷の話を交えながら作品を紹介します。
【日 時】12月8日(日)・15日(日)、13:30~
【申 込】不要(観覧料のみ必要)
【解 説】当館学芸員 穐月大介

穐月明の実家・愛媛県西条市の実報寺(真言宗)/本堂と背後の山です

実報寺と実報寺本尊

実報寺は寺伝に六四〇年道後温泉に湯治に来た舒明天皇の勅願により、法師が開山、弘法大師巡錫のおり当地に立ち寄り密教具を備え閼伽水井戸を掘ったと伝わります。地域一帯におよぶ広大な寺地であったと言われ、この地域を実報寺と言います。

 西条市指定文化財と天然記念物

本尊 木造地蔵菩薩坐像:楠の寄木造で像高3m鎌倉初期の作。最近修理された。

・の奉納額「聖帝山」、直卿は小松藩主・能書家。

・俊盛筆聖帝山来由記、平安時代に書かれた寺の縁起。

・天然記念物・一樹桜:小林一茶が「遠山と見しは是也花一木」と詠んだ名木。

「野の佛」穐月 明
石仏は穐月 明の代名詞的作品です。
その中でも地蔵菩薩には実報寺の本尊地蔵菩薩座像を思わせる作品が有ります。

自然の石ころを山や巨大な岩あるいは波や石仏に見立てた石を盆石といいます。小さく育てた木を盆栽というのと同じです。これは巨石に見立て達磨を座らせました。

今回はこのような盆石や自然石も展示いたしました。

河原津海岸
カブトガニの繁殖地として県の天然記念物とされ、昭和30年ごろは大きなカブトガニが普通に見られました。しかし高度経済成長期に海岸の埋め立てや、海水の汚染などで絶滅寸前となり、今地元で復活の努力が続けられています。

これは浜で拾った石と貝殻とカブトガニの標本です。

「海辺を行く母子」穐月 明
初期の京都時代の作でしょう。妻と子なのでしょうか?
いまだ一人前の画家になる前、どこにも所属せず、誰にも師事せず、たった一人、画家として家族を抱えて歩んでいく悲壮とも言える覚悟を感じます。

「願いを持つ石」穐月 明

「角のない小さな丸い石になるな。角の有る願いを持つ大きな石になれ」
西田天香
画壇に所属せず、師に付かず、弟子をとらず、何者にも迎合しない。自分の美意識を貫き、自分の信じる絵を描く。
願いを持つ石の様に生きようとしたのでしょう

「富士山(波)」穐月 明

「波濤・佐渡冬」穐月 明 初期(45歳)の作品です。

穐月明は若い頃より自分の描くべき作品は夏の陽気な海より佐渡の荒海だと考えていたようです。

石を波に見立ててみました。

「青松旭日」穐月 明

瀬戸内の島々をイメージして小さな盆石を並べました。

「日輪波濤」穐月 明
ススキの穂が揺れています。秋の夕暮れと荒波がこころを揺さぶります。

「西瓜割り」穐月 明

「雲ひとつなき日ざかりとなりにけり」
川上梨屋
作者はこの句に西瓜割りの絵を付けました。夏の思い出に家族とのスイカ割りが有ったのでしょうか。

「月光葉舟」穐月 明

「波も引き風もつながぬ棄てをぶね 月こそ夜半のひかりなりけり」 道元歌
(凪いだ水面に、乗り捨てられた小舟が漂っている。月(仏の真理)だけが闇夜を照すひかりである)

道元は鎌倉初期の禅僧で、日本の曹洞宗の開祖です。

「弘法大師渡海図」穐月 明

弘法大師空海は無名の長期留学僧として遣唐使船に乗りました。途中で嵐にあい大きく航路を逸れ福州長渓県に漂着しますが、苦難のすえ四ヶ月の後、都長安にたどり着きました。そして僅か三年で真言八祖の第七祖恵果から伝法の印信を受け日本に真言密教を伝えました。

「お伽草子・浦島の子」穐月 明

お伽草子を描いたシリーズの一点で「浦島太郎」です。このシリーズ独特のラフでスピード感の有るタッチで浦島太郎が竜宮城へ向かうシーンを描いています。