青山讃頌舎の名前の由来

緊急事態宣言を受け当館も開館延期となりましたが、此処で踏ん張らないとズルズル長引いてしまいます。この状況で楽しめることを見つけて乗り切りたいと思います。

伊賀市立のミュージアムになった事もあり、この機会にこのWEBサイトもリニューアル致しました。当法人のスタンスが見て分かる構成にしましたが、内容はそのままです。

今回から伊賀市立となり入場料も頂くことになりましたので受付も設置されました。今まで全て露出展示でしたが一部ガラスも入りました。しかし殆どの部分は今まで通りですので雰囲気はそのままです。
しかし設備の整った分、今まで露出では展示しにくかった物も展示できるようになりました。現在「穐月明名品展・やすらう世界」の展示は完成した状態で休館です。

今回の展示は中央に仏画と仏像を置き左右に広がる娑婆世界のイメージで展示しました。

娑婆世界とは釈迦が教え導く世界、つまりこの世界です。
穐月明は晩年「流水頌歌」展の挨拶の中で

「才乏しい私が代々寺だった家に育ちながら唯一得たものは、この風土の中に居られる神とその中で生きて逝く道を示して下さる仏の教えでした。四季の中の山と川の流れと海、其処に生きる様々なもの、本当に美しい。それを賛える水墨画を共感して観てくだされば幸甚です」

と書いています。穐月明にとって山と川と海の中で生きているこの世界が仏の世界だったのでしょう。

穐月明「山色清浄身」(今回は展示されていません)
穐月明「渓声広長舌」(今回は展示されていません)

又、いくつかの絵に「渓声広長舌」や「山色清浄身」といったタイトルが付いています。
これは北宋の文人・蘇東坡の詩から引用しています。

渓声便是広長舌:谷川の音は正に素晴らしい仏の説法なり
山色豈非清浄身:山はそのまま清浄なる仏の姿ではないか
夜来八万四千偈:ならば昼夜無限の如来の説法が聞ける
他日如何人挙似:このすばらしい感激を誰にどう伝えようか。

青山讃頌舎という名前は穐月明自身がつけたものです。今の展示室を建てる前から書籍、古美術を収納した自宅全体をそう名付けていました。
この詩のように「仏の声や姿である山河」を称えるという意味を此の地の旧名「青山」に掛けたのです。
緑豊かで文化の残るこの地を自然と人を対立するものではなく一体のものとして守りたいという思いがこもっています。