展示紹介「鐘聲いろは歌」穐月明
「いろは歌」よく知られていますが、その意味は意外と知らない方も多いと思います。
さらに言うと「いろは歌」は大般涅槃経の「雪山偈」を歌にしたものと言われています。
此の絵にはその「いろは歌」と「雪山偈」を併記しています。
鐘の音と、冬枯れの林が諸行無常を五重塔が仏の教えを表しているのでしょうか。
<いろは歌>
色は匂へど 散りぬるを (匂うがごとき楽しみもすぐに散ってしまう)
我が世誰そ 常ならむ (世のうつりかわりを誰がとめられよう)
有為の奥山 今日越えて (迷いの山々を今日越えゆけば)
浅き夢見じ 酔ひもせず (もう浅はかな夢に酔いしれることはない)
<雪山偈>
諸行無常 (全ての物事は移り変わる)
是生滅法 (これが生じ滅びるという真理である)
生滅滅已 (この生滅を超えたところに)
寂滅為楽 (煩悩を打ち消した真の大楽がある)
大般涅槃経の本生譚(釈迦の前世物語)より。
昔、来世で釈迦となる若者がヒマラヤで修行をしていた。帝釈天が、その道心を確かめようと、羅刹の姿で現れ、雪山偈の半分を唱えた。
「諸行無常 是生滅法」
若者は歓喜し続きを聞きたいと恐ろしい羅刹に請うと。
「腹がへって唱えることができない、人肉を食べたい」と言われる。 若者は覚悟を決め、「それでは私の体を食べさせるから、先に続きを聞かせて欲しい」 と言うと、羅刹は偈の続きを唱えた。
「生滅滅已 寂滅為楽」
若者はこの偈を書き残し、約束どおり羅刹に身を投げ与えると、羅刹は帝釈天にもどり、若者を受け止め深く礼拝し天上に帰ってゆく。