春の特別展「穐月明の愛した仏–龍谷ミュージアムのガンダーラ仏 里帰り」は終了しました

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2022年4月22日㊎~5月22日㊐
火曜日休館

穐月明旧蔵の仏教美術
ガンダーラ地域はインド亜大陸北部パキスタンあたりの古称です。紀元1世紀ごろここで世界で初めて仏像が作られ始めました。
穐月明は仏教をテーマに作品を作成する中で、多くの仏教美術を集めていました。収集は日本・中国から仏像の原点インド・ガンダーラの仏像にまで及び、特にガンダーラ美術は質・量ともに日本有数のものでした。それは仏像をこよなく愛し、仏教を真摯に探求していた明の思いの賜物でもありました。
これらの美術品の多くは生前、自身の手によって龍谷ミュージアム設立時に寄贈され現在大切に活用されています。
展示では寄贈・寄託されたガンダーラ仏の他、美しい仏教美術を観ていただきながらインドから日本に至る仏教の流れを概観します

観覧料 一般300円高校生以下無料
住 所 伊賀市 ミュージアム青山讃頌舎 〒518-0221三重県伊賀市別府718-3

■ 基調講演 「仏像のふるさと”ガンダーラ美術をたずねて”ー穐月コレクションを中心にー」
講師 龍谷ミュージアム初代館長 宮治 昭先生

宮治昭先生は世界的に知られたガンダーラ美術の研究者です。穐月 明の収集仏教美術に注目し日本有数の仏教美術館となるべく龍谷ミュージアム設立に御尽力されました。龍谷ミュージアムのガンダーラ美術についてお話いただきます。

5月 14日㊏ 13:30〜
青山ホール/三重県伊賀市阿保1411-1
問い合わせ (公財)伊賀市文化都市協会  ☎0595 22 0511/当日入場可

■ ギャラリートーク「仏への思い」

列品を解説しながら穐月明の仏教への思いと共にガンダーラ仏と日本の仏像を比べてお話します。
案内 学芸員 穐月大介
毎週日曜 13:30〜 
当館展示室 *先着15名

穐月 明「仏光湖水図」龍谷ミュージアム蔵(寄贈)

穐月明「仏光湖水図」

西方浄土の盟主・阿弥陀如来を夕日に例える図像は古くから有りますが、実際の風景に描き入れた作風は明独自です。琵琶湖の竹生島に沈む夕日の輝きがそのまま阿弥陀の輝きになっています。


世界最古の仏像=最高に美しい仏像・ガンダーラ仏/驚くほど美しい石像で大変精巧に彫られています。ミケランジェロのダビデ像のようです。

穐月明旧蔵 「菩薩立像」ガンダーラ(2〜3世紀)龍谷ミュージアム蔵
ガッダーラ「菩薩立像」

頭髪を結い上げ裸の上半身に天衣と装飾品をかける姿は典型的なガンダーラの菩薩像です。おそらく左手に水瓶を持った弥勒菩薩と考えられます。ギリシャ・ローマ彫刻の強い影響を伺わせる、逞しい肉体と彫りの深い顔、写実的でバランスの取れた表現はガンダーラ盛期の極めて高い技術を伺わせる優品です。龍谷の至宝に選ばれています。


日本ー中国ーインド(ガンダーラ)の仏/国と時代で変化する物・変わらぬもの

穐月明旧蔵「阿弥陀如来三尊」江戸時代・伊賀市蔵
「阿弥陀如来三尊」江戸時代

日本で独自に発展した念仏宗は南無阿弥陀仏と唱えれば阿弥陀如来が必ず極楽浄土に迎えてくれるという教えです。この仏は観音菩薩と勢至菩薩を伴い、臨終の際に雲に乗ってやってくる阿弥陀如来です。飛鳥仏や北魏、ガンダーラの仏と比べると大変日本的な姿になっていることがわかります。

穐月明旧蔵「如来三尊像」中国北魏(正光6年/525)・伊賀市蔵
中国北魏「如来三尊像」

北魏の仏龕(ぶつがん)です。代表的飛鳥仏「法隆寺金堂釈迦三尊像」(7世紀)と衣紋や顔の表情などが大変よく似ています。亡くなった親族を供養して造らせたと思われる碑文が刻まれています。

穐月明旧蔵「菩薩半跏思惟像」ガンダーラ(3〜4世紀)靑山讃頌舎蔵 
ガンダーラ「菩薩半跏思惟像」

これはガンダーラの菩薩半跏思惟像です。頭や体に宝飾を付け左手に蓮華の花を持った姿は観音菩薩だと思われます。ギリシャ風の風貌、引き締まった体とずいぶん観音菩薩とは違って見えますが、日本の観音のルーツです。


仏伝・ストゥーパを飾った釈迦の物語・・物語に託した仏教の立場
仏伝は釈迦の生涯を通して中道や涅槃など仏教徒としてのあり方が語られます。

穐月明旧蔵「 仏伝浮彫 出家決意・出城」ガンダーラ(2〜3世紀)伊賀市蔵
ガンダーラ「仏伝浮彫 出家決意・出城」

ある夜、目を覚ました釈迦は出家を決意します。上段は、夜半に起き上がり出家を決意する太子と、それに気付かず眠るヤショーダラー妃です。中段では、中央に城を出る太子と、馬の足を支える神、傘蓋をかかげる御者、弓を持ち先導する毘沙門天などが表されています。

穐月明旧蔵 「仏伝浮彫 マーラの誘惑/初転法輪」ガンダーラ(2〜3世紀)龍谷ミュージアム蔵

ガンダーラ「仏伝浮彫 マーラの誘惑・初転法輪」

【執着を捨て去る】
釈迦が悟に到る瞑想に入ると魔王が邪魔をしてます。上段左の釈迦が欠損していますが魔王の3人の娘が誘惑しています。下段左は襲いくる魔王を降魔印を結び退け悟りを得て「仏陀」となる釈迦です。魔王の攻撃は欲望や怒りを表すとされます。座禅を組み全ての執着を捨てる修行は今も続けられています。レリーフの下部は釈迦が5人の苦行仲間に初めての説法した初転法輪です。


姿を表す神と仏/釈迦が亡くなって500年間は仏像は造られませんでした。紀元1世紀ごろガンダーラやマトゥラーで仏像が造られ始めると神々も姿を表し始めます。

穐月明旧蔵 「ヤクシー」北インド(5~6世紀)龍谷ミュージアム蔵

北インド「ヤクシー」5ー6世紀

聖樹に宿る神で男性がヤクシャ(夜叉)、女性がヤクシーです。インド古来の神々で様々なヤクシャ、ヤクシーがおり仏教に取り入れられ多聞天や増長天、鬼子母神のような天部の仏になりました。この像は樹下で両腕を上げた姿で表され美しさと豊穣の象徴だったようです。

穐月 明「福徳弁才天」靑山讃頌舎蔵

穐月明「福徳弁財天」

弁財天もインドの女神です。サラスヴァティーという川の神様で財宝神で学問・芸術の神様でもあります。この絵でも川を背に琵琶を弾き蛇が小判を持って来ています。前の丸いものは願いを叶える如意宝珠です。蛇を配しているのは日本で成立した宇賀弁財天を意識してのことでしょう。弁天の由来を知っての作です。

穐月明旧蔵「春日鹿曼荼羅」室町中期 龍谷ミュージアム蔵

室町時代中期「春日鹿曼荼羅」

奈良時代に春日山麓に鎮座した春日神は、藤原氏の氏神として信仰を集め、春日大社は氏寺・興福寺とともに大いに繁栄しました。春日鹿曼荼羅は、春日神が常陸国から鹿に乗って奈良の地に影向したことに由来し、春景の春日山を背景に雲に乗る神鹿の鞍に榊を立て、そこに懸けた神鏡に春日四社(鹿島神、香取神など)と若宮の本地仏五尊(釈迦・薬師・地蔵・十一面・文殊)を描いています。
仏教は日本の神々とも融合し明治政府が神仏分離令を出すまで神社とお寺は常に一体としてありました。


[主催・お問合せ]公益財団法人 伊賀市文化都市協会 ☎0595-22-0511
[助成]公益財団法人岡田文化財団
[共催]伊賀市 [協力]三重県立美術館・一般財団法人東洋文化資料館靑山讃頌舎
[後援]三重県・ 伊賀市教育委員会・名張市教育委員会