2023年 秋の特別展「魂の相剋 中野英一遺作展」は終了しました。

「魂の相剋 中野英一遺作展」

 2023.9.8㊎ー10.9㊎㊗ 火曜日休館

中野英一さんのこと
毛利 伊知郎(もうり・いちろう 三重県立美術館前館長)
中野英一の逝去から既に18年。今や彼の名と作品を知る人は限られているだろう。しかし、中野は20世紀後半の三重の美術界で逸することができない作家の一人だと思う。
私が切めて中野とその作品に接したのは1980年代初め。 当時の中野はステンレスを素材に抽象的なレリーフを制作していた。恥ずかしながら、その時のことは「形」に対する作家の強いこだわりを示す作品だと思ったこと、作品がかなり重く制作にも苦労が多いという話を聞いたこと、それと彼の実直な人柄しか記憶にない、その後、話をする機会は幾度もあった。しかし彼の制作がどのように展開してきたのか詳細を聞くことはついになかった。彼との会話は展覧会や美術界についての雑談などが主で、彼も自身については積極的に話そうとしなかった。正直に白状すれば、 彼が様々な試みを続けていたのを私が知ったのは、2014年に関係者の尽力で開催された遺作展の際だった、初期の幾何学的構成の作品、モノクロームの有機的抽象の作品、金属のレリーフなど、絶えざる模索を展示作品は示していた。認識不足を私は恥じたた。
なかでも、1950年代半ばから60年代にかけて制作された抽象形態が画面を埋めるモノクローム調の作品群が発する原切的なエネルギーは人をひきつける力に満ちていた。あの朴訥な人柄の作家の内面に激しい感情が渦巻いていたことは大きな驚きだった。
終戦からほどなくして抽集絵画を始めた中野であれば、世界を席巻しつつあったアンフォルメル絵画や抽&表現主義に 彼が強い関心をもっていたであろうことは想像に難くない。しかし、彼は単に流行を追っていただけではなかった。他でもない自分だけの世界を両面に定行させようとする倦むことのない熱い戦いを続けていたのである。 そのことを彼の作品から強く感じるのは私一人ではないはずだ。

画歴
1926年(大正15年)三重県伊賀市 に生まれる
1957年 三重県展知事賞
1958年 二紀展佳作賞 三重県展中日奨励賞 (東京)二紀会特選展
1959年 二紀展同人推挙 (上野)アンデパンダン展企画参加(59~61年) 1960年 二紀展同人賞日本美術家連盟会員推挙 上野市展審査員(~2003年) 1961年三重県展審査員(61,87,90年)
1963年 二紀展同人優賞 (津)三重青年美術作 家展
1967年 (東京)二紀選抜 100人展 、(東京/大阪)コンファランスニ紀シーズンオフ展、(津)三重芸術文化協会第1回芸術祭参加 以後毎年出品
1973年 関西二紀会 記念大賞
1977年 二紀会会員推挙(東京)二紀選抜展
1980年三重二紀会結成支部長就任 (津)抽象の現状展
1981年 (上野)アートナウIGA展企画参加(81,82年)
1982年 (津)三重県立美術館開館記念 三重の美術・現代展 1996年 (津)アートフロンティア現代日本の視覚展(96,97年) 2005年 逝去
2014年 (津)遺作展三重県立美術館県民ギャラリ ー (津)三重県立美術館に作品収蔵
個展 (東京)ルナミ画廊、(大阪)あの画廊、あかお画廊、(津)三重会館、 三重画廊、(鳥羽)鳥羽水族館、ピュアアートギャラリー,(上野)上野産業会館、きの画廊など

【関連イベント】

◾️茶室「聴樹庵」で愉しむ秋の呈茶会

日 時:9月17日㊐•9月24日㊐
    ①10:00②11:00③13:00④14:00 各回8名
料 金:呈茶代400円(お抹茶•お菓子)
ご予約:8月19日午前10時から
   青山ホール電話0595-52-1109にて受付開始

他館同時開催

◾️堤側庵ギャラリ ー
「中野英一遺作展~スケッチブックより~」
会期:2023.9.9(土)-9.14(木)会期中無休
場所:三重県名張市新田8
時間:11:00-18:00
電話:0595-65-3002

◾️三重画廊
「中野英一遺作小品展~抽象作品を主体として~」
会期:2023.10.4(水)〜10.8(日)
場所:三重県津市中央18-19
時間:10:00-17:00
電話:059-225-6588

写真「中野英一」

展示作品

展示室

「無題」1957年 中野英一
初期の作です。一見完全な抽象画に見えますが、建物をモチーフにしています。

「無題」1957年 中野英一
建物をモティーフにさらに抽象化されています。

「無題」1964年 中野英一
心の葛藤を抽象化した様です。戦時中に思春期を迎えたことが影響しているのかもしれません。

「無題」1959年 中野英一
切り裂かれたキャンバスが印象的です。

展示室

「無題」1961~66年
かっこいい作品です。

「無題」1967~69年 中野英一

「無題」1980年 中野英一

展示室

[臨」1982年 中野英一

「婁」1998年 中野英一
生涯スケッチを続けていたと言われ、雪や水のイメージが投影されているのかもしれません。

「作品ー対角」2000年、「9月」1999年 中野英一
晩年、初期の直線のイメージが再び現れます

◾️同時開催/堤側庵ギャラリ ー
「中野英一遺作展~スケッチブックより~」
会期:2023.9.9(土)-9.14(木)会期中無休

名張市新田(近鉄美旗駅)の堤側庵ギャラリーでは「中野英一遺作展 スケッチブックより」を開催。抽象画家として活躍していた中野英一氏のほとんど発表されることのなかった風景画を展示しています。抽象画を描きながら生涯スケッチは続けていたそうです。
会期:2023.9.9(土)-9.14(木)会期中無休

◾️同時開催/三重画廊
「中野英一遺作小品展~抽象作品を主体として~」
会期:2023.10.4(水)〜10.8(日)

水彩の洒落た作品

少しダークなイメージを持つ作品

これぞ中野英一と言えるアイスブルーの作品

抒情あふれる水彩の風景画

三重画廊の「中野英一遺作小品展~抽象作品を主体として~」展では様々な中野英一が見られます。中野英一を理解するのに欠くことのできない展覧会です。お見逃しなく。