伊賀市 ミュージアム青山讃頌舎特別展  「文化の交差する所 伊賀 ー出土品が語るその歴史と文化 ー」は終了しました。

本展は4月9日をもちまして終了しました。

伊賀市文化財課の構成による当館初めての本格的な地元の考古展示となりました。芭蕉や忍者につながる「伊賀の歴史文化」此処に有りと言える驚くべき発掘品に、多くの考古ファンや地元の方も驚いておられました。他県から駆けつけてくださった専門家の先生方にも展示物を絶賛していただきました。 今回の展示が伊賀の歴史文化の再認識に繋がり今後もこの様なイベントが開かれれば良いなと思います。

2023.3.10(金)〜4.9(日)火曜休館 開館 10 時〜16 時30 分(入館16 時まで) 料金 一般300円(高校生以下無料) 場所 伊賀市 ミュージアム青山讃頌舎 伊賀市別府七一八番地三

今回は伊賀市の文化財課が埋蔵文化財を展示いたします。 伊賀人々が暮らすの足の下に眠っている貴重な文化財をご覧ください。

伊賀は、西側が律令制下には畿内と呼ばれる地域に接し、東側は伊勢湾を介して東日本につながる場所に位置します。「秘蔵の国」と称された伊賀は、とかく山々により閉ざされた閉鎖的な地域を思い浮かべがちですが、その地勢的な条件から、広範な地域との交流も有していました。その一方で、西にも東にも属さない独自の文化を育み、現在にいたっています。 本展示では、伊賀の文化の独自性と受容性・普遍性の両面に焦点を当て、考古資料を中心とした展示を行います。伊賀の歴史を振り返ると、その時代の節目、節目に文化的にも優れた事物を生み出していますが、今回は6つのテーマを定めた展示を行います。
  1. 人が住み始めたころ
  2. 時代の要請に応えた須恵器窯~御墓山窯跡~ 
  3. 出土品に見る「西」と「東」 
  4. 経を埋めること 
  5. 郷土史研究の偉人たち 
  6. 人と動物とのかかわり  
ギャラリートーク「展示解説」 日時:3 月18 日(土) • 4 月2 日(日)、① 11:00〜 ・② 14:00〜 会場:伊賀市ミュージアム青山讃頌舎展示室 講師:福田典明氏(伊賀市教育委員会文化財課) 定員:各回20 名(予約制) ※観覧料が必要となります。
呈茶会—当館前の桜山公園は桜の名所です一 日時:4 月1 日④ • 4 月9 日、①10:00〜 ②11:00〜 ③13:00〜 ④14:00〜 会場:茶室「聴樹庵」 定員:各回8 名(予約制) 呈荼:代400 円(お抹茶•お菓子) ※展示室は別途観覧料が必要となります。
*お申込み・受付 2 月11 日(土)午前10 時から青山ホール 電話0595-52-1109 にて受付開始
ピクニック気分で遺跡探検! 秘蔵の神社-2つの「猪田神社」の秘密を探る- 今回の展示物が多く出土した場所を案内します 日時:3/25(土)13:15〜16:00 集合:下郡 猪田神社 案内:穐月大介 定員:15名 *詳細は「いがぶら春」の冊子、HP等をご覧ください ホームページ:https://igabura.com/

1、人が住み始めたころ

旧石器/ナイフ型石器
伊賀市猪田の田中遺跡から出土した旧石器時代のナイフ型石器/紀元前16,000年以上
旧石器〜縄文石器/猪田だけではなく阿保や比土からも旧石器や縄文時代の石器が出土しています。
伊賀においては、後期旧石器時代の石器が数カ所の遺跡で出土しています。また、石器にプラスして道具としての土器を生み出した縄文人は、紀伊半島中央部の中山間部において活発に活動するようになり、伊賀市においても花代遺跡(阿保地区羽根)、川上中縄手遺跡(あおやま川上湖) で同時期の遺物が出土しています。
穐月明「流水頌」/かつての川上村(あおやま川上湖)でしょう。縄文からの遺物が出土しました。

2、時代の要請に応えた須恵器窯~御墓山窯跡~

仏像を収めた厨子ではないかと言われる宮殿形陶製品です

宮殿形陶製品 御墓山窯跡 飛鳥時代/仏像を収めた逗子として作られたのでしょう
御墓山窯跡/子持台付壺
「御墓山」(みはかやま)の名は、三重県最大規模の前方後円墳として著名ですが、古墳の南側には飛鳥時代に開窯する須恵器窯が築かれていました。1993年(平成5)に行われた発掘調査では、大量の遺物が出土しました。古墳時代の色合いの残す陶棺といった大型品も焼成される一方で、地方にも流布するようになった仏教信仰の影響を強く受けた製品も作られました。
穐月明「磨涯仏・阿弥陀三尊」/伊賀市寺田にある中ノ瀬磨崖仏と言われる大きな阿弥陀三尊像です

3、出土品に見る「西」と「東」

古くからの出土品についても「西」と「東」では大きく異なるものがあります。

伊賀北部同じ北門遺跡から出土した畿内風の瓦器椀と伊勢風の山茶碗
一例をあげると、中世において日常の食膳具として用いられた瓦器椀は、伊賀の中世の遺跡の発掘調査を行えば例外なく出土しますが、隣の伊勢においては食膳具の主体は山茶碗という陶製の食膳具を用い、瓦器はほとんど出土しません。
穐月明「春耕」/伊賀の風景を思わせる作品が会場を飾ります

4、経を埋めること

猪田神社の神殿のすぐ裏から経塚が発見されました。 そこから出てきた経筒に大日と描かれていました。

猪田神社・経塚出土瓦製経筒
瓦製経筒の模様/猪田経塚
古代末期において、末法思想が全国的に流布するなかで、追善供養などのため、経典を地中に埋納する経塚が全国で造られるようになりました。1972年(昭和47)に、本殿の背後で台風による豪雨のためがけ崩れが発生した猪田神社(下郡)では、翌年、斜面地の災害復旧工事に際して発掘調査が実施され、多数の経塚が残存することが判明し、出土した瓦製の経筒には、経典の名を示した「大日」の文字が描かれたものもありました。
時代は下りますが、江戸時代末、安政の大地震の被害者の供養のため、一周忌法要に合わせて法華経塔が建てられましたが、石碑を支える基壇内部に、法華経と一字一石経が納められたことが知られています。

5、郷土史研究の偉人たち

穐月明「城跡の見える川」/木津川上流の国道25号・大野木橋あたりから見た上野城でしょう。

白鳳時代のお寺の瓦です。伊賀は壬申の乱の時、天武天皇の進軍ルートになります。天武天皇に味方した豪族の寺のでしょうか。 故岡田栄吉氏により収集され市指定有形文化財に指定されています。

三田廃寺出土蓮華文軒丸瓦(故岡田栄吉氏旧蔵・市指定有形文化財)
猪田・田中遺跡/沖嶋氏縄文石器
故秋永康年氏収集/土符(伊賀でしか出土しない)、塼仏、木樋形土製品(非常に希少)
伊賀の郷土史研究に大きな役割を果たした人物として、故秋永康年氏、故岡田栄吉氏と故沖嶋卯之氏が上げられます。三氏が収集された考古資料には伊賀の郷土史、特に古代史を解明するための重要な資料が数多く含まれています。 これらの資料は、郷土史の研究に資するために、伊賀市教育委員会に寄贈され、随時、文化財保護の啓発活動のため活用されています。
穐月明「参道」比々岐神社の参道でしょう。故秋永康年氏は大村神社の宮司でした

6、人と動物とのかかわり


鳥の姿をつまみにした須恵器の器の蓋です。人々は動物物の姿を象徴的に使ってきました。

須恵器 水鳥頭部/秋永康年氏旧蔵
古代の動物形陶器/犬は安産のお守りか
伊予之丸古墳/鹿ヘラ描き埴輪
古来、人は身の周りの動物と関係をもって生活していました。当初は食料として狩りの対象とされていましたが、やがて共存して生活するパートナーとしての役目も有するようになりました。また、ツル・カメといった動物は、吉祥なるものとして様々な図柄に選ばれ、中世以降の鏡の背面には、こういった動物を描いたものが数多く残されています。
穐月明「池・花・雲」/伊賀のどこかの池に降り立った水鳥です
驚くような考古資料が多数展示されています。
本物の土器が手に取って触れるコーナーも有ります